最後のウッドビューカメラ製作者であった長岡啓一郎氏が一昨年他界されて、もう今後日本製の素晴らしい暗箱は新品で入手できなくなりました。長岡氏のカメラはウッド部を北海道の旭川より北で採取された朱利桜を使い、その原木を狂いが無くなるまで何年も寝かせた材木から作られて、その精緻な作りと次々に新しいアイディアを注ぎ込み一台一台が少しづつ異なるのも特徴の一つでした。晩年は体調と相談されながら月に1～２台程度造られていて大変貴重なカメラです。この個体はおそらく約10年前後前に作られたモノで、晩年に作っていた軽量の8x10でアオリの機能もシッカリと作られているタイプです。重量はおよそ3.8キログラムですので6キロほどもあるディアドルフと比べれば取り回しが楽です。本体には小さなキズも散見されますが機能に問題はありません。気になる蛇腹にも破れやピンホールも確認できず、蛇腹にベタツキもありませんが格納状態から展開するときに蛇腹が少し張り付く感があります。レンズボードはリンホフボードに対応しています。ピントグラスにある白い部分は撮影時の映り込みです。ピントグラスの方眼線も薄れていない綺麗な状態です。